何が起きているか分からないと思うので。

書きます。
25日の夜は日比谷公園で催されているイルミネーションを見に行った。
久しぶりに幻想的な時間を過ごすことが出来て、そして久しぶりに楓さんの顔を見られて幸せな気持ちでいっぱいだった。
でも、僕の気持ちとは裏腹に、楓さんは僕と友達のままでいたい、と言い続けた。
僕が男性としてまだまだ未熟であることがその最たる理由だったが、隠れて会い続けることに罪悪感を感じ始め、それでもなお会い続ければ会い続けるほど、彼女は自分の付き合っている男性と僕の両方を裏切り続けることになる。
そんなひどいことをする自分に耐えられない、と彼女は言った。
これは前々からも言われていたことだったので、僕はそれに対してそれほどショックを受けはしなかった。
 
僕は彼女の立場に立って何度も考え続けた。
彼女からすれば何かが起こらない限り安穏と暮らしていける今の生活を優先させるのは当たり前だ。
では、なぜ彼女は僕と会うのだ?
僕はいくら考えてもこの回答をどうしても得ることが出来なかった。過ちなら一夜限りで終わるべきだったのだ。
男性なら分かる。何度も簡単にセックスが出来る相手を手放すわけはない。だが彼女は女性だ。
でも彼女は自らの意思で僕と交流することを四月の時に望み、今日まで一緒にいた。
 
僕は、ある日から彼女が僕のことを待ちたいのだとずっと思っていた。
僕がいわゆる普通の社会人として社会に出るのを待っていたいのだと、そう感じていた。
彼女にとって僕は、彼氏とは全く違った形で安心できる環境を与えられる人間のはずだった。お互いが無意識のうちにそれを理解していた。
 
僕が許せなかったのは彼女の彼氏だった。
びっくりするような長い間彼女とともに暮らし続けているのに、結婚を意識させるような発言は一度もしていないと言う。
僕は、これはおかしいと思っていた。
僕の周囲の男性は、未熟であれどうであれ、長く付き合った相手には自らの口から結婚の意思を伝え、その準備のために生活を組み立てている者もいた。
それが男性としての責任であり(同棲しているのなら尚更)、楓さんのように寂しがりやで甘えん坊な人にはそうすることで安心感を抱かせてあげられると思う。相手の人生に干渉している以上、それは男性のマナーだ。
 
僕はそれらのことと僕自身に起きていることがごちゃごちゃになってしまっていた。彼女はそれでもよかったのだ。何かが起きることこそが一番怖く、結婚なんてしようとしまいと、そんなことは彼女にとっては紙切れ一枚の契約が交わされただけなのだ。
それでも。、世間体を考えていないように感じられる彼女の彼氏には、時折憤りを覚えた。
 
僕はそれらのことを彼女に話した。
僕はそれらを理解している、だからこそ、僕と君は共に生活していくことが必要で、僕はそれを目指して日々頑張っている、と伝えた。けれど、彼女はそれを一蹴した。そんな幻は捨てて、あなたは別の人を選びなさい、と。
 
だから僕は落胆したのだ。そもそも、なぜそんなことをこの人に言われなくてはいけないのか分からなかった。

駅に着いた。彼女に会ってきます。会えるかは分からないけれど。