色恋の惨酷さと儚さ。

 昨夜は結局朝方まで相手の話を聞いていた。
 『恋愛』とは恐ろしい。冷静な思考を持っていた人間が、ここまで恐ろしく変わることが出来るのかと、相手の発言をじっと聞きながら思っていた。そして、それはまるで昔の自分を見ているようだった。
 昔の自分は相手の望んでいる事をきちんと理解すること無しに、自分の理想を押し付けることしかしていなかった。目の前で話している彼女もそれと同じ事をしていて、彼女の行動が相手の目にどう映るのかを考えるコトなんて、きっとしばらくの間見失っているのだろうな、とただただ冷静に耳を傾けることしか出来なかった。
 風が冷たい。本当に春なのだろうか。