夕方から渋谷に出掛け、ライブで知り合った子と会った。
もともと同じアーティストが好き、という点で仲良くなったので、和むまでにそう時間はかからず。
お気に入りのハンバーグのお店で夕飯を食べて、カクテルの種類が多いことで有名な某カフェバーに移動。
カクテルを飲みながら、ぺらぺらとしゃべる。好きなアーティストのこと、仕事のこと、普段の生活の様子、前に付き合っていた人はどんな人だったのか、徐々に話の進行は深いところへと向かっていく。
『そういえば、メールしていた時に自分のことを「考えすぎる性格だ」って言っていたけれど、実際のところ、どうなの?』
僕は自分が持ち合わせている性格について、かいつまんで説明した。自分のことよりも他人のことをつい優先してしまうこと、心が弱い女の子に好かれやすいこと、ちょっと微妙な恋愛を繰り返してきたために、なかなか自分の気持ちを打ち明けられないこと。
『わかる〜っ!確かに、Sinさんって聞き上手だから、なんでも受け入れてくれそうな雰囲気あるもん。あたしだったら甘え過ぎて駄目になっちゃいそう。』
なんだろう?軽くフラれたのか?
「…でもさ、人って勝手なもんでさ、」
少しだけ、酔っていたのかもしれない。ふだん押し込んでいたものを、つい吐き出してみたくなった。
「自分のことを受け入れてもらえたら、もうそれで終わりなんだよ。受け入れてもらって、楽になって、新しい道を見つけて、自分で進んで行く。僕は相手の背中を押すだけ押して、それで終わり。だから…きついよ。」
きついよ。
自分で発したその一言が、病気に向き合ってきてちょっと疲れていた自分自身の心の奥底でほぼ瞬間的に、ずしりと大きな鉛の碇をつくった気がした。碇の元の鎖は頭の目の奥につながっていて、碇が落ち込んだとき、たまった涙が流れ出そうな気がした。僕はそれを必死に我慢しながら、話し続けた。
「それでも…人が俺といることで楽になってくれてるなら、ありがたいよ。」
うそだ。本当はそれだけじゃだめだった。できることなら、誰かに甘えて、自分の気持ちを誰かに分かって欲しかった。そして、心も身体も受け入れられたかった。
そんな内心が透けて見えたのか、相手の子は言った。
『…なんか、あたしはそこまでいろいろできないし考えたこともないけれど…甘えてみてもいいんじゃない?もっと素直に自分の気持ちをだしてもいいと思うよ。』
わかってる。わかってるけれど。
なかなか、むずかしいよ。