会社帰りに…

会社の同期の女の子のさとこ(もちろん仮名)が、
『話したいことがあるので一緒に帰りましょう』
とメールしてきた。
特に断る理由もなかったので仕事が終わった後で合流した。
例の「ホストみたいだね」と言ってきた子ね。
 
ここに書くのも変な話だが、この子は俺に気がある。
会社内で他の同僚達から噂されているのを俺は知っていた。
今の会社で勤務をするのも残りあとわずか。
彼女なりに勇気を出して行動したことなのだと感じた。
当の俺は無関心なのに…
 
精一杯のアピールなのか、横を歩きながら体をくっつけてくるさとこ。
それをかわす俺。
断言しておくが、この子と付き合う気も無いし何をする気も無い。
何故なら低スペックだから。。。
磨けば光るんだろうけど、少なくとも今はダメ。
 
新宿へ移動して街を歩く2人。
カラオケがしたいと言うさとこの希望を聞いて歌広場へ。
ちょうど俺も歌っていなかったのでってのもある。
 
狭くて暗い室内
もちろんギラつく
なんてことは無く、ミスチルとあゆを歌う2人の声が部屋に響く。
昔のあゆの曲が好き…某スト師さんのチェックだと暗黒度が高い証拠だ。
またかと思いながらとりあえず歌い切り歌広場を後にする。
 
「歌舞伎町は知り合いが多いから歩けないんだよね」
自慢げに話すさとこ
昔はキャバをやっていたらしい。
歌舞伎町中のホストクラブには顔を出せるくらい稼いでいた。
しかもK生の頃に(笑)。
嫌な予感がする…。
 
飲みアポをあまりしないのがポリシーの自分
今日もファミレスへ入る(笑)。
 
ファミレスでは質問とM術を織り交ぜながら話を聞いていく。
一通りプラスの話をした後で悩みを聞いていく。
さとこは小学校の頃に親が離婚している。
俺もその辺は同じ。さとこも離婚してから東京へ引っ越してきている。
「父親が最悪でさ…この歳でひとりでお風呂に入っているのにさ、
突然ドア開けて入ってくるんだよ…ありえないよね…」
「昔からそんな感じだったの?」
「家族に無視されっぱなしだった、家に帰ってもおかえりも言ってくれないし、
お姉ちゃんも話を聞いてくれないからあてに出来なくなったんだ」
「家族が信頼出来ないんだ…」
「だから学校では明るく振舞うようにしていたし、そうしていれば友達も増えて
仲良くやっていけると思ったんだけど…」
「けど…?」
「中学出た頃からかな…浮き始めたんだよね、
ギャルにも真面目な子にもなれない自分がいてさ。
毎日学校行くのが苦痛になっていた頃に、友達に誘われてホストクラブに行ったんだ」
ここがさとこのターニングポイントだった。
ホストクラブにさとこを引き連れた友人が、
ホストにつぎ込むために金を闇金から借りた。
それを返すために友達はさとこをキャバの道へ引きずり込む。
断りきれないさとこ…
ところがその友達はさとこが入った途端キャバへ働きに行くのを止め、
さとこから稼ぎの一部をせびり始める。
頼れるものが居ない中で大切な友人を失いたくないさとこは
友達に金を渡し、更には身分証明書も貸してしまう
気が付くと残ったのは巨額の借金だけ
友達はさっさと携帯を解約して、連絡が取れずじまい…
やがてさとこがキャバとして働いている店にガサ入れが入り、
さとこはそこから一度足を洗った。
 
「誰も信じられないんだ…今の仕事をしていても大半は返済に消えていくしさ。
でもきちんと返したくて今の仕事しているから、頑張って続けていくよ。」
「そういう気持ちを持ち続けるのは大切だと思うし、
目標を決めて行動している事は立派だと思うよ…
こういう話は誰かにしたことあるの?」
「言えないかな…一人だけ地元に仲の良い子が居てね、
その子は本当の愛情であたしを迎えてくれるから何でも話しているんだ、
でもこんな風にあっさり話せたのはSinが最初だよ」 
「…」
 
最近暗黒系が寄ってくるのは、何のせいなんだろうとずっと思っていた。
だから今日は俺のイメージを聞いてみた。
「うーん…落ち着いているから何を話しても平気そうだった。あと、聖人君主っぽいよ(笑)」
 
白いイメージ。
それが黒い人たちには魅力的なのだろうか?
憧れに近いものなのだろうか?
少なくとも、俺は喋らないとそういう風に見えるらしい。
ただ、以前と違って何を聞いてもビビらなくなった分だけ、
人の話や行動を冷静に観察することが出来るようになった。
それが相手にも安らぎを与えるのかな。
白のアピールが強すぎて相手に不快感を与えたこともあったけどね(笑)。
 
ただ
こういうスタンスで話を聞いていくためには、
ギラつきとは無縁の存在であるべきだと思った。
ギラつけるほどの信頼関係が築けているのならそうなるのも運命だろうけど。
そうしなくてもいい関係があるはずだし、
そっちのほうが長い目で見ると自分にとってプラスになるように思えた。
 
これからは、ギラつきが少ない良好な関係を築いて、
たくさんプラスを貰おう…。